以下の内容は、「カラーシステム」小林重順 著 日本カラーデザイン研究所 編(講談社 1999)の内容の一部を抜粋し、
再編集したものです。
1.色相とトーンの展開
◆40色相の色名系を作成する
1966年、小研究所では、JISに準拠し、40色相の5000色にわたる色票を製作し、統計的に整理し、同時に色名の研究を始めた。
下欄の出典にある文献を参考にして、色名が集中するところを、プレグナンツ・ポイント(ゲシュタルト心理学におけるイメージを簡潔に表す地点)と名づけ、そこを各トーンの中心とした。そのうえで、各40色相に、12トーンの範囲を設定した。色相の違いをこえて、例えば、P(ペール 淡い色相)のトーンであるならば、各共通したイメージがあることがわかってきたからである。
その結果から、色相の違いよりも、トーンの共通性の方が、イメージ戦略には貢献度が高いということにも気づいた。つまり、「淡い感じ」、「ソフトな感じ」などのように、共通語でそのイメージを秩序づけ得るのである。こうしたトーンイメージを手掛かりに、カラーマーケティングなどでも、実用性が証明されていった。
2.系統色名系からの発想
1955年に、全米色彩協議会ISCC(International Society of Color Council)と、アメリカ国家標準局NBS(National Bureau of Standard)は、ISCC-NBS系統色名呼称方法を含めた色名辞典を刊行した。その文献を参考にしつつ小研究所はHue&Tone(ヒュー・アンド・トーン H&T)システムをつくった。発想の重点はトーンにむけられた。
このなかでは、色名が集中するところを配慮して、トーンを定めた。明度、彩度にあまりこだわらず、その数値よりも、トーンのコンセプト(その色相で果たすイメージの役割)を重んじた。色相をこえたトーンのイメージづくりの均一性に重点をおいたのである。
◆なぜ、トーンを重視したのか
10色相にしろ、40色相にしても、色相の秩序体系は、比較的つくりやすい。これまでの色名系が色相を中心に作成されてきたからである。しかし、〈明度/彩度〉の数値は、色相によって統一性を欠くので、明度や彩度のイメージは色相ごとにかなり違ってしまう。
V(ビビット)トーンなどは、色相により明度/彩度はきわめてバラバラだか、Vividと名付けられる色名は、派手さ、鋭さ、清色さなどで、イメージのうえで似ていて、同等性(Identity)があるといえよう。
しかし、Vp(ベリー・ペール)トーンになると、9/2~9/1と、明度/彩度はそれほどの違いはない。この点に着眼し、色相をこえて、トーン・イメージの共通性を具体的な事物について探しだすことにし、イメージ調査によって、確かめていった。
むしろ、色相よりも、トーンの方がイメージづくりに1:3で貢献する(寄与率をだした)。そのうえで、工学的測色よりも、心理的認知(だれでもが、素直にそう認めること)を尊重したのである。
ここから、H&Tシステムへの開発が前進していった。