言葉から連想される色、色から連想される言葉。この二つの等価性を確認することからイメージスケールの開発は始まりました
色に対して抱くイメージは人によって少しずつ異なりますが、共通する部分も多く認められます。Hue&Toneシステムの130色それぞれのイメージをSD(=Semantic differential=意味微分)法によって調査し、結果を蓄積していきました。SD法で使った形容詞は、C.E.Osgoodと飢戸宏による日本語の形容詞における4つの基本因子を参考に設定しています。
結果を因子分析することで、イメージを評価する基本となる主要軸が抽出されました。
1.WARM-COOL軸
2.SOFT-HARD軸
3.CLER-GRAYISH軸
この3つの軸によって、イメージの判断軸の主要な因子が発見されました。
同じく配色についてもイメージの測定が行われました。
またあらかじめ言葉を決めて、それを3色配色に置き換える「色彩投影法」によって、色→言葉、言葉→色 相互の関係を整理していきました。ある言葉をテーマにつくられた配色の色相、トーンを分析することで、その言葉と関連の深い色相やトーンが明らかになっていきました。
多くのサンプルによる試行錯誤を経ながら「配色イメージスケール」へとつながっていきます。
単色のイメージ評価に対して因子分析を行った際、抽出された軸とSD語との関連(SD語の軸上の位置を示す得点)も算出されていました。その数値を元に軸上にSD語をプロットし、言語イメージスケールの原型が作られました。
ここでようやく単色、配色、言語のイメージスケールのプロトタイプが完成しました。
色と言葉が相互の関連したスケールです。しかし、より使いやすく整理されたものにするためには、実際に実務に使っていく中で、改良を加えていく必要がありました。
色と言葉の相関を継続的にテストしながら、標準化、実用化のプロセスを繰り返し、現在のイメージスケールの形にたどり着いています。
「カラーシステム」小林重順著(講談社)における「イメージスケールの開発のプロセス」はこちら
イメージスケールに関する米学術誌に発表された研究論文(ダウンロードは有料)
■『The aim and method of the color image scale』Shigenobu Kobayashi 1981
Color Research & Application Volume 6, Issue 2
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/col.5080060210
■『From Munsell color system to a new color psychology system』
Setsuko Horiguchi,Katsura Iwamatsu 2018
Color Research & Application Volume 43, Issue 6 Special Issue: Munsell Centennial
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/col.22286
上記の論文がWILEY社の“Top downloaded paper 2018-2019”として認定され、その証明書を受け取りました。2018年1月から2019年12月の間に公開された論文の中で、オンライン公開後の12か月間に最も多くダウンロードされた論文の上位10%に含まれ、本論文が世界中の多くの研究者に大きな関心を与えたことを示します。